CINÉMONO(シネモノガタリ)第二話「ミッドナイト・イン・パリ」

CINÉMONO(シネモノガタリ)第二話「ミッドナイト・イン・パリ」

 パリの夜。アンナとリュカは、一日を振り返りながら、街灯に照らされた石畳をゆっくりと歩いていた。昼間に訪れた場所のことや、途中で見つけた小さな店のことを話しながら、ときどき立ち止まっては笑った。二人にとっては、ただの穏やかな夜だった。自分たちがいつの間にか映画の中に入り込んでいることなど、まだ知る由もなかった。

 すると、通りの向こうからウディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』に登場する一台の古いタクシーが、ゆっくりとこちらへ近づいてきた。丸いヘッドライトの古びた車体が街灯の下を滑るように進んでくる。アンナは車を眺めたまま、少し首を傾げた。「ねえ、あれって……?」リュカも車体をじっと見つめる。「というか……あれじゃない?」タクシーは二人の前で静かに停まった。運転席の男は二人を見て、何も言わずに後部座席のドアを開けた。

 二人は顔を見合わせた。行き先を尋ねても、運転手はただ前を向いている。アンナが先に乗り込み、リュカもその隣に座った。ドアが閉まると、タクシーは静かに走り出した。しばらくすると、窓の外のパリが少しずつ変わっていった。現代の車は姿を消し、通りを歩く人々の服装も、店の看板も、いつの間にか昔のものになっている。

 タクシーが停まったのは、小さな店の前だった。中からはジャズが聞こえていた。二人が店に入ると、そこには見覚えのある顔がいくつもあった。ヘミングウェイが誰かと話し、マン・レイがカメラを抱えて歩いている。少し離れた席ではピカソがグラスを傾け、その向こうではダリが何やら熱心に語っていた。アンナとリュカは、まるで映画の続きを見ているような気分で、その夜を過ごした。

 やがて夜が明け始めた。店を出ると、通りの向こうにタクシーが停まっていた。今度は運転手が何も言わなくても、二人は乗り込んだ。車が走り出すと、古いパリはゆっくりと遠ざかり、気がつけば二人は元の街に戻っていた。翌日の夜、アンナは「もう一度、行ってみない?」と言った。リュカも同じことを考えていた。二人は前の夜と同じ通りを歩いた。同じ時間、同じ石畳、同じ街灯。けれど、タクシーは現れなかった。

 「もう一回くらい、乗せてくれてもいいのにね」リュカが言うと、アンナは少し笑った。「一期一会、っていうでしょ……」二人はそれ以上何も言わず、また歩き始めた。

▼ この物語に登場する映画
『ミッドナイト・イン・パリ』(2011年/監督:ウディ・アレン)

※ 現実にある出来事や映画、モノゴトから生まれた架空の物語です。物語とともに、お店の世界観や登場人物たちのコーディネートもあわせてお楽しみください。
Anna(アンナ)コーディネート
Lucas(リュカ)コーディネート
商品一覧
全6商品
並び替え:
6商品中 1 - 6表示
  • 前へ
  • 1 ページ目
  • 次へ

Item Search

カテゴリーから探す

About Us

当店について
世界各国から直接輸入した日用品や園芸道具、
オリジナルを含むファッションアイテムが中心の
京都・紫野にあるライフスタイルショップです。

京都府京都市北区紫野上築山町21(1階と2階)
営業時間 / 12:00 - 18:00
定休日 / 水・日曜
7月・8月の第一・第三水曜日は営業しています

SHOP INFO

地図や臨時休業などのおしらせは「SHOP INFO」ページをご覧ください