CINÉMONO(シネモノガタリ)第二十三話「オリーブの林をぬけて」

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CINÉMONO(シネモノガタリ)第二十三話「オリーブの林をぬけて」
CINÉMONO(シネモノガタリ)第二十三話「オリーブの林をぬけて」

 朝から遠くの地で銃弾が飛び交うニュースを見ていた。アンナはこの日、軍モノをモチーフにしたオリーブ色のバッグを手に出かけることにした。それを見たリュカは、オリーブ色のミリタリーワークパンツに履き替えた。「反戦、ってこと?」アンナが聞く。「そんなところかな」とリュカは笑った。けれど、その言葉は思ったより軽くなかった。

 二人は、オリーブの林を歩くことにした。やがて、樹齢千年を超えるオリーブの木々が立つ丘に辿り着いた。大きな木の陰に腰を下ろすと、映画『オリーブの林をぬけて』について語り始めた。地震のあとに残された村と、どこまでも続くオリーブの林。そこに暮らす人々と、映画を撮る人々。そして、映画の中で生きようとする人々。現実と映画と、そのあいだにある時間が重なり合うような、不思議な映画だった。

 映画史に残る、美しいラストシーンを思い返した。オリーブの林の向こうへ下っていく二人の後ろ姿だけが、ただ映し出される。二人のその先に何があるのか。それ以外のことは、何も語られない。「で、どうなったの?」と、リュカが見知らぬ誰かの真似をしてふざけた。「そういうこと言う人、いるよね」とアンナ。二人は顔を見合わせて笑った。わからないことを、わからないままにしておく。

 どうなったかなんて、その先へ進んだ二人だけが知っていれば、それでいい。こちらはただ、その姿を見ていればいいのだ。あのあと何があったのか、二人が何を話したのか。勝手に想像して、答えを決めてしまう必要なんてない。わからないまま、美しいと思えば、それで十分なのに。それこそが、あのラストシーンの美しさなのかもしれない。二人はそんな話をしていた。

 台風一過のこの日、いつも以上に穏やかに感じた。それでも、遠くのどこかでは、まだ銃弾が飛び交っている。二人はそのことを忘れたわけではない。ただ、今ここにある穏やかな時間を、穏やかなまま過ごしていた。

 「あの二人、あのあとどうなったら幸せになれたのかな?」アンナは少しだけ笑った。「さあ」。リュカはその答えを聞くと、丘の下に続く道を指差した。「あのラストシーンみたいに、この丘を歩いて降りてみよう」。リュカがそう言うと、アンナは先に歩き出した。やがて二人は少しずつ離れては近づき、いつの間にか、また並んで歩いていた。誰にもその先はわからない、ラストシーンの美しさを味わうように。オリーブの林はどこにもない。それでも二人の前には、まだ見えない何かへ続く道があった。

▼ この物語に登場する映画
『オリーブの林をぬけて』(1994年/監督:アッバス・キアロスタミ)

※ 現実にある出来事や映画、モノゴトから生まれた架空の物語です。物語とともに、お店の世界観や登場人物たちのコーディネートもあわせてお楽しみください。

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