CINÉMONO(シネモノガタリ)第十七話「パリ・テキサス」

CINÉMONO(シネモノガタリ)第十七話「パリ・テキサス」

 いつもなら軽く見て、そのまま通り過ぎる棚。けれど、その日はなぜか、リュカの足が止まった。そこに並んでいたのは、どこか懐かしさを感じさせるトートバッグだった。リュカはその中のひとつを手に取った。かつてアメリカの電話通信を支えた「BELL SYSTEM」のヴィンテージトートを思わせる、新品のトートバッグがずらりと並んでいる。

 「これ、いつ来てもあるよね」。アンナは苦く笑った。「そうかもね」。リュカが少し驚いた顔をすると、アンナはバッグを手に取った。「でも、私はこれを見るたびに、ある映画を思い出すんだ」。リュカも同じだった。「『パリ・テキサス』?」。もし、主人公トラヴィスがトートバッグを持っていたら何が入っていたんだろう?とバックを開いてみた。「なんでこのバッグを見ると、あの映画なの?」。「ロードムービーと電話?何より不朽の名作」。

 リュカはバッグを持って、鏡に映った自分を見た。「いつか買おうと思ってるのに、いつもタイミングを逃すんだよ」。「残念。バッグに選んでもらえないんだね」。アンナは笑った。「新作とか、限定とか、別注とか。新しいものは楽しいし、限定って言われると、今買わなきゃって思う。でも、ずっと追いかけてると、ちょっと疲れる」。「疲れたら、同じものを買い直したっていい。気に入ってるなら、もうひとつ買ったっていい」。

 二人はしばらく黙っていた。「僕、けっこう失敗してるな」。アンナが笑う。「私もだよ」。「服も、靴も、映画も。買って、違うなって思って、手放して。また別のものを買って」。少し恥ずかしそうにリュカが続けた。「失敗って、無駄だったのかな」。アンナは首を振った。「挑戦しなかった人には、失敗すらないよ」。

 いろんなものを試して、いろんなものを好きになった。いろんなものも嫌いになった。その先で、ふと気づくことがある。何度手放しても、また戻ってしまうもの。何年経っても、やっぱり好きだと思えるもの。それが、自分にとっての不朽の名作なのかもしれない。世の中の評価と同じなら、それはそれでいい。違っていたって、別に構わない。誰かに名作だと言われる必要なんてない。

 リュカがバッグを見つめた。「あのバッグ、買おうかな」。アンナは笑った。「いいんじゃない」。「なんか、前に手にした時よりしっくりくる」。アンナはバッグを見て、それからリュカを見た。「バッグは変わってないから、リュカが追いついたんだね。おめでとう」。

 「どのサイズ?」「どの色?」。二人はバッグを並べて見比べた。「迷うね」。少し考えて、リュカが笑った。「トラヴィスならどれを選ぶのかな?」

▼ この物語に登場する映画
『パリ・テキサス』(1984年/監督:ヴィム・ヴェンダース)

※ 現実にある出来事や映画、モノゴトから生まれた架空の物語です。物語とともに、お店の世界観や登場人物たちのコーディネートもあわせてお楽しみください。

衣装一覧


COSTUME LIST
Lucas(リュカ)コーディネート
Anna(アンナ)コーディネート
商品一覧
全25商品
並び替え:
25商品中 1 - 25表示
  • 前へ
  • 1 ページ目
  • 次へ

Item Search

カテゴリーから探す

About Us

当店について
世界各国から直接輸入した日用品や園芸道具、
オリジナルを含むファッションアイテムが中心の
京都・紫野にあるライフスタイルショップです。

京都府京都市北区紫野上築山町21(1階と2階)
営業時間 / 12:00 - 18:00
定休日 / 水・日曜
7月・8月の第一・第三水曜日は営業しています

SHOP INFO

地図や臨時休業などのおしらせは「SHOP INFO」ページをご覧ください