CINÉMONO vol.15
シネモノガタリ 3 September 2026
ファニーとアレクサンデル
(アンナ)シャツ/
Another 20th Century、ベスト/
Allinone、パンツ/
Decho
(リュカ)ジャケット・パンツ/
Allinone、カットソー/
Another 20th Century
(小道具)プランターボックス・LPボックス/
Works&Labo.、エフェクター/Chase Bliss Audio「blooper」、雑誌/GINZA
アンナは書店で、リュカが好きな雑誌『GINZA』の特別編集本を見つけた。『心地良い部屋、毎日の定番』。表紙を見て、なんとなく手に取り、そのまま買って帰った。「おしゃれな人が使っている日用品、だって」部屋に戻ると、ソファに座っていたリュカが「同じの買ったよ」。二人でページをめくっていると、アンナの手があるページで止まった。「あれ?LIFETIMEの店主さんが入ってるよ」
そこには、店主の愛用品が紹介されていた。「なにを紹介しのかな?」とリュカが言う。「でもさ、雑誌『GINZA』に店主の愛用品が載るなんて、なんか不思議」アンナは少し首をかしげた。「店主さん、おしゃれなの?」「怪しいね〜」リュカが笑う。「そもそも、おしゃれって何なの?」その言葉に、二人はしばらく黙った。
「おしゃれな映画は?」とアンナが聞いた。「ファニーとアレクサンデル」とリュカはすぐに答えた。「おしゃれなミュージシャンは?」「トーキング・ヘッズ」「即答だね」アンナは少し笑った。「そういえば、LIFETIMEっていう店の名前も、たしかトーキング・ヘッズの曲からなんだよね」「うん。店主さん、ずいぶん長いあいだ好きなんじゃないかな」
おしゃれな人って、どんな人なんだろう。流行をよく知っている人。服を上手に着こなす人。高価なものや珍しいものを持っている人。「いや、きっと違う。それは、おしゃれに憧れている人だよ」とリュカが言った。本当におしゃれな人は、たくさんのものを見て、いろんなことを経験してきた人なのかもしれない。経験の深さがあり、ものを見る視野が広い。それでいて、どこかウィットに富み、少しだけ皮肉もある。
何に惹かれ、何に違和感を覚えるのか。「これが好き」「これは、なんか違う」。何を選ぶかと同じくらい、何を選ばないかも大切なのだろう。そんな小さな選択を長い時間かけて繰り返すうち、その人らしい「選び方」ができあがっていく。本人は、おしゃれになろうとしているわけではなく、ただ自分が好きなものを選んでいるだけなのかもしれない。
二人は、もう一度『GINZA』のページを開いた。そこには、店主が選んだ五つの愛用品が載っていた。「店主さん、いつもGINZA好きって言ってるから、喜んでるね、きっと」「うん。でも平気な顔してると思うけど」「ほんとは?」「かなり喜んでる」二人は顔を見合わせて笑った。好きで長いあいだ選んできたものを、誰かがふと見つけてくれた。今回の掲載は、店主にとって、案外そんな出来事なのかもしれなかった。
※ 現実をもとにした架空の物語です。アンナとリュカは、今日もオンラインショップのどこかで活動しています。
Anna(アンナ)
43歳/160cm/56kg/脚本家/京都在住
インドからイギリスへ移住した祖父とポーランド人の祖母を持つ母と、日本人の父との間に生まれる。京都を拠点に脚本を書きながら、ドキュメンタリーや短編映像、ミュージックビデオなどの制作にも携わっている。人や街の何気ない瞬間を捉えることが好きで、特別な出来事よりも、日常の中にある光や音、表情に惹かれる。脚本を書くときには、物語だけでなく、その場の空気や映像まで自然と思い浮かべているという。流行よりも、ベーシックなものを長く愛用しており、自分の生活に自然と馴染むものを好む。京都で暮らすようになってから、撮影モデルとしてLIFETIMEに通うのが日課になっている。
Lucas(リュカ)
41歳/172cm/65kg/音楽家/京都在住
モロッコからフランスへ移住した祖母とフランス人の祖父を持つ父と、日本人の母との間に生まれる。京都で暮らしながら、ロック、テクノ、ジャズを融合させた環境音楽を制作している。音楽家としての活動はインターネット上に限られ、匿名のアーティスト名義で作品を発表している。海外にも熱心なリスナーがいるが、実際に彼の正体を知る人はほとんどいない。普段は穏やかで物静か。1950年代から1970年代に生まれたものや、その時代の空気を感じさせるものに惹かれる。服だけでなく、家具や道具、音楽に至るまで、そこに残る時代の匂いや佇まいを好む。制作の合間にLIFETIMEへ撮影モデルとして通っている。