CINÉMONO vol.9
シネモノガタリ 23 August 2026
フォレスト・ガンプ
(アンナ)
帽子/
Decho、
オーバーオール/
Napron、
トレーナー/
Gorouta、
靴下/
Mauna Kea
(リュカ)
帽子・パンツ/
Decho、
ジャケット/
Another 20th Century、
シャツ/
Allinone
アンナとリュカは、大きな木の枝に並んで座っていた。葉の隙間からこぼれる光が、二人の服をまだらに照らしている。アンナは枝から足をぶらぶらさせ、リュカは小さな紙箱をシャツのポケットに入れていた。「ねえ、それ何?」「秘密」「怪しい」。
この日、偶然とはいえ二人は色違いの同じ帽子をかぶっていた。熱帯地域を想定したリバーシブルのサンハット。片面は上空から見つけてもらいやすい救難用になっている。ベトナム戦争時代のハットがモチーフらしい。「じゃあ、遭難したら裏返せばいい」とリュカ。「こんな木の上で遭難する人いる?」「僕たち、もう十分怪しいと思うけど」。木の上で色違いのペアルック、二人は顔を見合わせ、思わず笑った。
「そういえば、フォレスト・ガンプもベトナム戦争に行ってたよね」「うん。戦争に行って、走って、恋をして、気づいたら会社まで大きくなってる。人生って、ずいぶんいろんなことが起こるね」。リュカはそう言って、紙箱を差し出した。「じゃあ、これも開けてみる?」。中には小さなチョコレートが四つ入っていた。「何味?」「知らない。店員さんが、食べてみるまでわからないって」。
アンナは箱を覗き込み、「ママのあの台詞、好きなんだよね。『Life is a box of chocolates, Forrest. You never know what you're going to get.』人生はチョコレートの箱、開けてみるまで何が入っているかわからない」。
二人は一つずつ選んだ。アンナが口に入れた瞬間、「ワサビ!」と顔をしかめた。リュカも一口食べ、「こっちは唐辛子だ!」と舌を出した。二人は顔を見合わせて帽子を裏返した。「これはさすがに、人生の洗礼って感じだね」。笑い声が木の葉の間に響いた。
アンナは残った二つを見た。「さて、今度はどうかな」。二人はもう一つずつ選び、木の上でゆっくり口に入れた。アンナの目がぱっと明るくなる。「ミルクチョコだ」。リュカも味わうように噛んで、「こっちはビター。ちょっと苦いけど」。二人は顔を見合わせた。「どっちも悪くない」。二人は笑った。これから先も、甘いことばかりではない。でも、きっと悪いことばかりでもない。二人は、そんな気がした。
食べ終わると、二人はそれぞれの帽子を元の面に戻した。「いつでも裏返せるってことは覚えておこう」。木の葉の間を抜ける風が、オリーブとネイビーの帽子を軽く揺らしていた。
※ 現実をもとにした架空の物語です。アンナとリュカは、今日もオンラインショップのどこかで活動しています。
Anna(アンナ)
43歳/160cm/56kg/脚本家/京都在住
インドからイギリスへ移住した祖父とポーランド人の祖母を持つ母と、日本人の父との間に生まれる。京都を拠点に脚本を書きながら、ドキュメンタリーや短編映像、ミュージックビデオなどの制作にも携わっている。人や街の何気ない瞬間を捉えることが好きで、特別な出来事よりも、日常の中にある光や音、表情に惹かれる。脚本を書くときには、物語だけでなく、その場の空気や映像まで自然と思い浮かべているという。流行よりも、ベーシックなものを長く愛用しており、自分の生活に自然と馴染むものを好む。京都で暮らすようになってから、撮影モデルとしてLIFETIMEに通うのが日課になっている。
Lucas(リュカ)
41歳/172cm/65kg/音楽家/京都在住
モロッコからフランスへ移住した祖母とフランス人の祖父を持つ父と、日本人の母との間に生まれる。京都で暮らしながら、ロック、テクノ、ジャズを融合させた環境音楽を制作している。音楽家としての活動はインターネット上に限られ、匿名のアーティスト名義で作品を発表している。海外にも熱心なリスナーがいるが、実際に彼の正体を知る人はほとんどいない。普段は穏やかで物静か。1950年代から1970年代に生まれたものや、その時代の空気を感じさせるものに惹かれる。服だけでなく、家具や道具、音楽に至るまで、そこに残る時代の匂いや佇まいを好む。制作の合間にLIFETIMEへ撮影モデルとして通っている。