いつかノコト vol.3
LIFETIME通信 15 August 2026
ミッドナイト・イン・パリ

(アンナ)ベスト/
Allinone、シャツ/
Another 20th Century、パンツ/
Decho
(リュカ)シャツ・パンツ/
Allinone
パリの夜。アンナとリュカは、一日を振り返りながら、街灯に照らされた石畳をゆっくりと歩いていた。昼間に訪れた場所のことや、途中で見つけた小さな店のことを話しながら、ときどき立ち止まっては笑った。二人にとっては、ただの穏やかな夜だった。自分たちがいつの間にか映画の中に入り込んでいることなど、まだ知る由もなかった。
すると、通りの向こうからウディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』に登場する一台の古いタクシーが、ゆっくりとこちらへ近づいてきた。丸いヘッドライトの古びた車体が街灯の下を滑るように進んでくる。アンナは車を眺めたまま、少し首を傾げた。「ねえ、あれって……?」リュカも車体をじっと見つめる。「というか……あれじゃない?」タクシーは二人の前で静かに停まった。運転席の男は二人を見て、何も言わずに後部座席のドアを開けた。
二人は顔を見合わせた。行き先を尋ねても、運転手はただ前を向いている。アンナが先に乗り込み、リュカもその隣に座った。ドアが閉まると、タクシーは静かに走り出した。しばらくすると、窓の外のパリが少しずつ変わっていった。現代の車は姿を消し、通りを歩く人々の服装も、店の看板も、いつの間にか昔のものになっている。
タクシーが停まったのは、小さな店の前だった。中からはジャズが聞こえていた。二人が店に入ると、そこには見覚えのある顔がいくつもあった。ヘミングウェイが誰かと話し、マン・レイがカメラを抱えて歩いている。少し離れた席ではピカソがグラスを傾け、その向こうではダリが何やら熱心に語っていた。アンナとリュカは、まるで映画の続きを見ているような気分で、その夜を過ごした。
やがて夜が明け始めた。店を出ると、通りの向こうにタクシーが停まっていた。今度は運転手が何も言わなくても、二人は乗り込んだ。車が走り出すと、古いパリはゆっくりと遠ざかり、気がつけば二人は元の街に戻っていた。翌日の夜、アンナは「もう一度、行ってみない?」と言った。リュカも同じことを考えていた。二人は前の夜と同じ通りを歩いた。同じ時間、同じ石畳、同じ街灯。けれど、タクシーは現れなかった。
「もう一回くらい、乗せてくれてもいいのにね」リュカが言うと、アンナは少し笑った。「一期一会、っていうでしょ……」二人はそれ以上何も言わず、また歩き始めた。
※ 現実をもとにした架空の物語です。アンナとリュカは、今日もオンラインショップのどこかで活動しています。
Anna(アンナ)
43歳/160cm/56kg/脚本家/京都在住
インドからイギリスへ移住した祖父とポーランド人の祖母を持つ母と、日本人の父との間に生まれる。京都を拠点に脚本を書きながら、ドキュメンタリーや短編映像、ミュージックビデオなどの制作にも携わっている。人や街の何気ない瞬間を捉えることが好きで、特別な出来事よりも、日常の中にある光や音、表情に惹かれる。脚本を書くときには、物語だけでなく、その場の空気や映像まで自然と思い浮かべているという。流行よりも、ベーシックなものを長く愛用しており、自分の生活に自然と馴染むものを好む。京都で暮らすようになってから、撮影モデルとしてLIFETIMEに通うのが日課になっている。
Lucas(リュカ)
41歳/172cm/65kg/音楽家/京都在住
モロッコからフランスへ移住した祖母とフランス人の祖父を持つ父と、日本人の母との間に生まれる。京都で暮らしながら、ロック、テクノ、ジャズを融合させた環境音楽を制作している。音楽家としての活動はインターネット上に限られ、匿名のアーティスト名義で作品を発表している。海外にも熱心なリスナーがいるが、実際に彼の正体を知る人はほとんどいない。普段は穏やかで物静か。1950年代から1970年代に生まれたものや、その時代の空気を感じさせるものに惹かれる。服だけでなく、家具や道具、音楽に至るまで、そこに残る時代の匂いや佇まいを好む。制作の合間にLIFETIMEへ撮影モデルとして通っている。