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The Story Behind LIFETIME

photo by for a little beauty

 今朝、一枚の葉書が届いた。アンナ・ジュブワからだ!

 二〇〇三年の夏、お店のオープン初日。最初のお客様はフランスから来日した女性だった。そのコケティッシュな出で立ちと、ベルギーリネンキャンバスのトートバッグに詰め込まれた画材から、彼女が誰であるのかはすぐにわかった。ちょうど一週間前のニュース番組で、五歳の時に描いた絵がオークションで高額で落札されたと写真付きで報道されていたからだ。ほかでもないアンナ・ジュブワその人だった。

 「素敵なバッグですね。」

 と声をかけた。接客は世間話から、そう決めていた。

 「ありがとう。友人が作ってるの。リネンでもキャンバス織りで丈夫だし、底もあるから重たい荷物をたくさん入れても、ほら?型崩れしないでしょ。」

 そんな会話がきっかけとなり、当店でHidden Cabin(ヒドゥンキャビン)を販売するに至ったのである。

 幼少のころからずっとアルザス地方の森で創作活動を行いながら、自給自足の生活を送っていたアンナ。しかし、オークションでの高額落札で状況が一変し、フランスの喧騒から逃げるように京都にやってきたのだ。

 「また来るわね。お元気で。」

 彼女が再び姿を現すことはなかった。あれから十五年、画家としての噂話さえも耳に届くことはなく、すっかり記憶から遠のいていた。

The Story Behind LIFETIME

『 親愛なるライフタイムへ

 お元気ですか?アンナ・ジュブワ、覚えてらっしゃるかな?
 先日、本屋さんで買った FLOWER magazine を読んであなたを思い出したの。

 当時は今のわたしの絵を見て欲しくても、五歳の落書きが求められて。代表作って怖いわね。それで絵が描けなくなり、気が付けば十五年。それが不思議なことに、FLOWER magazine を読み終えた時、なんだかもう一度絵を描きたくなったわ。心を込めて、ありがとう。

 京都に行くときは、かならずお店に行くわね。またお会いできるのを楽しみにしています。

アンナ・ジュブワ 』

 葉書の消印はロンドン。山奥で自給自足の暮らしをしていた人が、今は大都会。紆余曲折を経て経験を積んだ彼女は、きっとまた素晴らしい絵を描くに違いない。

(注)架空の物語です。

The Story Behind LIFETIME